Wood Program / 北欧の国フィンランドで木造建築

Moimoi. どうも、Taichiです。 森と湖の国ことフィンランドから、建築やデザイン、留学、教育など幅広い分野に首を突っ込んでいきます。

新概念と流行り言葉、サスティナビリティにコミットする?

Moi.

どうも、Taichiです。

 

 

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三浦しをんの「舟を編む」を一日で読み切ってしまいました。

映画で何度もぼろ泣きしたのですが、小説では辞書作りに対する想いの方がひしひしと伝わって、辞書を愛でたいなぁという気持ちでいっぱいです。

 

そんなわけで今日は言葉の話。

 

 

 

ニート」という言葉が世に広まってから久しいですが、元々の意味を知っている人はどれくらいいるでしょうか。wikipediaを引用してみます。

 

ニートイギリス英語: Not in Education, Employment or Training, NEET)とは、就学就労職業訓練のいずれも行っていないことを意味する用語である。

 

 

我々が普段使っている意味と違うことに気づきましたか? 日本語の「ニート」が意味するところは働く気のない怠け者、無職、場合によっては失業者やフリーターなど、定職に就いていないものまで含めることがあります。これらはオリジナルから見ると完全なる誤用ですが、日本語としては既に定着してしまっています。

 

イギリスで作られた「NEET」という言葉は、「教育、雇用、職業訓練に参加していない 16〜18歳の若者」を一括りに表す新しい概念でした。対して日本語の「ニート」とは、今まで「すねかじり」「穀潰し」「プー太郎」などと言われていた人を表す言葉の代用としてまかり通っているに過ぎません。

 

言葉は次々と新しく生まれ、その意味は刻々と変化していきます。新語の中には既成概念を言い換えたものもあれば、新しい概念を表すために作られたものもあります。「ニート」は前者で、「NEET」は後者です。そして「ニート」は流行り言葉であって、いつかは廃れて行きます。

 

言葉にも流行り廃りがあり、そしてそれがあたかも全く新しい概念を表す言葉かのように振る舞うことが多々あります。ありがちなのはカタカナ英語。日本語にも言い換えられる言葉をあえて英語を使うのは、「流行り」だと言わざるを得ません。

 

しかし英語には、日本語に元々存在しなかった概念を表す言葉が多々あります。最近の言葉では「sustainability」や「identity」、古くは「society」「individual」などがあります。「持続可能性」「自己同一性」「社会」「個人」などは、これら新しい概念を表す言葉を翻訳して作られた新しい日本語でした。

 

むやみやたらに流行り言葉を使うことは、受取り手の混乱を招きます。「結果を約束する」といえばいいところをあえて「結果にコミット」と言い換えることは、プロモーション戦略以外に妥当な理由はありません。流行り言葉なのか、新しい概念を表す新語なのかは慎重に判断せねばならないのです。

 

今の時代、辞書を引く人も少なく、言葉に対して敏感な感性を持つ人も少ないように感じます。言葉は想いを伝えるための道具ではありますが、もう少しその道具への敬愛の念があっても良いのではないかと、常日頃から思うのです。

 

では。