フィンランドの"普通の"図書館のレベルがすごすぎる件
Moi.
どうも、Taichiです。
現在Jyväskylä(ユバスキュラ)という街で大学のサマースクールに通い、フィンランド語講座を受けています。
jyväskyläはフィンランドのちょうど真ん中にある都市です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Demographics_of_Finland
真ん中…?
(人が住める範囲の)真ん中というか、北半分のラップランドには人があんまり住んでいないので、中央フィンランドというとjyväskyläのあたりを指します。
jyväskyläは首都helsinkiから約4時間、学生が多い街として知られています。人口と首都からの距離からして、日本で例えると福岡か広島みたいな街だと思えば想像に難くないと思います。
そんな街にある、普通の中央図書館に行ってきました。
有名建築家の設計というわけでも、新しい建物というわけでもなく、わざわざ観光に来る人などいないようなごく普通の市民図書館。
そんな、なんの変哲も無いありふれた図書館のレベルに度肝を抜かれました。これがフィンランドクオリティ…。
広々とした吹き抜けと高い天井。撮っている場所は二階で、三階がぐるっと取り囲むようになってます。非常に気持ちがいい、居心地がいい。天井の明るい部分は照明ではなく自然光です。一部がガラス張りになっていて、フロア全体が自然光によって明るく照らされています。
ちょっと見にくいけどこんな感じ。そして窓の下に見えるのは蛍光灯。明かりが足りない時はこれが自動で点灯するようになっています。この天窓のおかげで、閉塞感が皆無です。
三階の廊下には二階が見渡せる席が用意されています。コンセント完備。眺めはいいし太陽光が燦々と降り注ぐ。いつまでもいられそうでした。
僕が図書館で重視するのは、本棚の近くにどれだけ椅子が用意されているか、です。目的の本だけを借りて帰るだけなら椅子は必要ないんですが、読みたい本の隣にある本とか、通りすがりに気になった本とか、ただただブラブラして偶然目にした本とかを手にとってすぐ座って読めるかどうかってすごく大事だと思うんですよね。それこそが図書館の醍醐味だと思います。
この、フィンランドの、普通の図書館は完璧でした。
本棚迷路のどんつきに椅子 ハイサイドライトが眩しい
パーテーションと机と椅子
三方囲まれた椅子とそれにくっつく机と椅子
三方囲まれた机は半パーソナルスペース その裏にはラウンジのような場所
ここはアクリル壁で他とは仕切られていて、少し落ち着いた場所、ペンダントライト
Reading Stopというスペース ちょっと立ち止まって、本でも読んで行って!と言わんばかり
集中したいときは個室へ
すごい角度の座面の椅子
でも座ってみるととっても落ち着く
ソファでくつろいで、本でも映画でもお好きなように
テーブル付きの椅子
新聞の電子版が読めるiPadが備えつき
すでにお気づきかもしれませんが、椅子が多様すぎる。何種類あんねん。
そして各椅子の質が高い。安物の椅子なんかありませんでした。どれもこれも座る人のことを考えて設計されているような、座りごこちの良いものばかり。
これも僕が居心地の良いと思うポイントなんですが、「様々な種類の場所がある」ことはとっても豊かな気分にさせてくれます。
天井の高さ、明るさ、椅子の座面の硬さ、背もたれや肘掛の有無、机の高さ大きさ、自分で自由に好きな場所を選べます。その日の気分で、一番心地よいと思う場所を。
画一的な椅子と机がずらっと並ぶような図書館では決して味わうことのできない気分です。
椅子と机は図書館にとって本と同じくらい重要なんですね。僕はそう思います。
肝心の本はどうかというと、これも素晴らしい。日本でもそうですが、本の在り処が検索一発でわかるような現代の図書館において必要なのは、わかりやすい並び順よりも「いかに本との出会いを増やすか」です。それも意外な本との出会いを。
例えば先のReading Stopは階段を上がったすぐの場所にありました。本は表紙が見えるように並べてあるので、背表紙だけを眺めるよりも中身がイメージしやすいし、手に取る確率も高くなるかもしれません。
本棚の端には別の本棚が
右手、中古CDを漁るかのように本を探す 左手はDVDです
テーマに沿って集められた本 「様々な性別」
本読みたくなりませんか?こんな空間。
僕は片っ端から気づいたら手にとって
「…フィンランド語読めないんだった」
と思っては棚に戻し、また手に取り、気がついたら数時間過ごしていました。恐ろしや。
児童コーナーも紹介したかったんですがあいにく写真を撮り忘れてしまって。
でも、こんな環境で育ったら誰でも自然に本を読むようになると思うんです。事実フィンランド人は読書が好きです。一年間に人口の約4倍の本が売れているんです。
人口約540万人のフィンランドでいま、毎年2000万冊を超える本が売れている。子どもも含めて数えれば、一人あたりの年間平均購買数は約4冊。
読書を愛するフィンランド人 - フィンランド大使館・東京 : 最新ニュース : お知らせ
「本が読める」ということは、何か困ったことがあった時に自力で解決することができるようになるということです。何かのマニュアルでもいいし、辞書とか、あるいは考えに行き詰まったり、恋愛の悩みなんかも解決できるかもしれません。自分で調べて、自分で解決することができるようになる。
残念ながらこの世には本が読めない人がいます。識字率や教育の話ではなく、頭の中に「本を読む」という選択肢がない人です。2年間ほど中学生に国語を教えていたのですが、彼らを見ていて痛烈に感じたことは
「この子たち本が読めないまま大人になったら、その頃には仕事なんかないんじゃないか」
機械ができる仕事は機械にやらせる。その守備範囲が日を追うごとに広がっている世の中で、未だに機械が苦手としていることは「文章を読み意味を理解すること」
何かの問題を解決するために書をあたり策を練ることは、未だ人間にしかできません。読解力をつけなければ、本を読めなければ、仕事は機械に取って替えられます。
いかに子供達に書に親しんでもらうかは、これは先進国の教育で重要な課題だと思います。そのためにはムチではなくアメが必要なのです。楽しいから読む。面白いから読む。そんな体験を子供の時から持つことが大事ではないでしょうか。
フィンランドの普通の図書館のレベルが、これです。羨ましいどころじゃない…。今回は割愛しますが、デザインやディテールも優れていました。普通の図書館なのに…。
ただ「中央図書館」と書いてあるだけなのに、なんでこんなかっこいいんだ…。
Helsinkiに行くと、もっともっと楽しい図書館がたくさんあります。それはまた今度。
では。