Wood Program / 北欧の国フィンランドで木造建築

Moimoi. どうも、Taichiです。 森と湖の国ことフィンランドから、建築やデザイン、留学、教育など幅広い分野に首を突っ込んでいきます。

三本の映画の話 〜 真実を知るということ

Moi.

どうも、Taichiです。

 

最近見た映画、ドキュメンタリーが偶然にも共通点を持っていたので、

今日はそのことについて語ろうと思います。

  

 

1st. 「あん」監督:河瀬直美 主演:樹木希林永瀬正敏

2nd. 「Congo, The Blood in Our Pocket.」 監督:不明

3rd.  「The True Cost 〜真の代償〜」監督:アンドリュー・モーガン

 

 一本目は日本映画で、二本目はインド人監督によるコンゴの映画、三本目はアメリカ人監督によるインドの映画です(バングラディッシュも含む) 

 

 

以下ネタバレを含みます。もしあなたが上記の映画を見る予定なら、先に見てきてください。

 

 

 

 

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あん(Netflix)

どら焼き屋”どら春”の雇われ店長が76歳の老女、徳江を雇う。彼女が作るつぶあんがあまりに美味しく、店は繁盛するが、心ない噂が彼らの運命を変えて行く。(Netflixより)

 

あんは、単純に楽しめる映画です。お話も芝居もすごく良くて、好きな映画をいくつか挙げろと言われたら確実に入れます。

樹木希林演じる徳江さんはらい病患者で、そのことを隠してどら焼き屋で働き始めるのですが、どら焼き屋のオーナー(店長を雇っているおばさん)はその噂を耳にし、らい病に関する間違った知識と、無知による恐怖心から徳江を解雇するよう、店長さんに迫ります。

 

この映画は、「差別心が生まれる瞬間」を克明に描いた作品です。

 

「らい病患者は昔、厳重に隔離されてたらしい」

「手足や鼻が落ちるんだって、気持ち悪い」

 

そう言いながら、病気のことをよく知りもしない彼女は、自身の恐怖心と外聞を気にして、「らい病患者を雇い続けるわけにはいかない」という決定をします。

 

差別問題には必ず、「寝た子を起こすな論」というものがついて回ります。

「らい病なんて今の子供たちは知りやしないんだから、わざわざ教えなくても差別は自然消滅するだろう」という主張のことです。

これは一理あるのですが、しかし重大な見落としがあります。それは

 

「差別は無知による恐怖から生まれる」

 

ということ。

 

得体の知れない病気、自分に感染するかも知れないという恐怖(今回は、噂が広まり店が潰れるかもという恐怖でした)

映画を見てもらえばわかると思います。差別が生まれる瞬間。

 

この映画は同時に、「知ることの大切さ」「知らないことの愚かさ」も教えてくれるようです。店長さんは病気に関して詳しくは知らなかったかも知れないけど、徳江さんのことはよく知っていた。彼女の人となりや、考え方。透き通るような心を持った人だと。

「無知」は人に負の感情を植えつけます。知らないことほど怖いものはない。

 

映画は雄弁です。ここで語り尽くすことのできないことを語ってくれます。

ぜひご覧ください。Netflixは650円から契約できますよ。

 

 

 

 

 

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Congo, The Blood in Our Pocket.Youtube

 

コンゴは最も貧しい国の一つであり、統制がまるでなってないため常に紛争状態にあります。

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 しかし埋蔵資源の価値を換算すると皮肉にも、最も裕福な国となります。

 

 

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コンゴの世界シェア

 

コルタン-70%

コバルト-34%

銅-10%

ダイアモンド-10%

不法ウラン採掘-不明 

 

この映画はコルタンという鉱石をテーマにした短いドキュメンタリーです。コルタンとは、スマートフォンを始めとするあらゆる電子機器に使われている鉱石で、近年需要が増加する一方コンゴでの違法採掘も増え続けています。

コルタン - Wikipedia

 

この貴重な鉱石の需要は、コンゴを最も貧しい国にしている要因の一つです。

 

wired.jp

 

実はこのドキュメンタリーを撮影した監督と会ったことがあるのです。大学の英語の先生が監督と知り合いで、来日した時に教室でそのインド人監督と一緒に映画を見ました。

 

 「私たちの電子機器への欲望が、コンゴの悲劇を起こしている」

 

そう言われた時、戸惑いました。そんなこと知らなかったから。かっこよくて便利なスマートフォンを欲しいという気持ち、行動が、企業をコンゴへと出向かせ、安価にコルタンを仕入れさせる。時に違法に、時に残虐に。

 

しかし彼は続けて、「この映画の目的は君たちにそれを放棄させることではない」と言って自分のスマートフォンを取り出しました。

「私も持っている。テクノロジーは後戻りができない。本当に必要なことは ”あなたが何者かを知ること” だ」と言いました。

 

私たちは「裕福さ」のピラミッドの頂点で生まれ育ち、暮らしている。「自分が何者かを知る」とは、自分の足元に誰がいるのか、そのピラミッドは誰が支えているのか、自分は誰に生かされているのか、を知ることだと思います。

 

 

 

 

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 The True Cost 〜真の代償〜Netflix

 

前回、itobanashiというファッションブランドでインターンを始めたという記事を書きましたが、要するにこれが理由です。

 

 より安い服を欲する消費者と、途上国の労働者を搾取する工場の間にある見えないリンクを追う、現代のファッション産業を捉えなおすドキュメンタリー。(Netflixより)

 

ここ数十年で、「服を買う」という行動は全く別物と言っていいほど、状況が変化しました。

ついこの前までは国内の服の7割近くを国内で作っていたのに、今ではたった数%にまで減りました。それはより安い国で製造し、服の値段を安価にするためです。

 

服は消費財ではありません。当たり前のように聞こえるかも知れませんが、それを現実にしてしまったのがいわゆる「ファストファッションブランド」です。過度に安価になった服は、人に「保善」や「お下がり」という選択肢を忘れさせ、人はまだ着れる服をためらいもなく捨てます。

 

服を着る人は、その生産から廃棄までの責任を負うべきである。

そのためには、ファッション業界の真実を知らねばならない。

そういう意図で撮られた映画です。

 

先のドキュメンタリーにも共通しますが、私たちの欲望と無知がこの状況を加速させているのです。誰しもがこの問題の責任を負っているのです。

 

 

 

 

三本の映画、いかがだったでしょうか。ぜひ全て見てください。

 

最初は「知ることの大切さ」

続く二本は決して他人事や遠い世界の話ではない「とある真実」を伝える映画でした。

 

知りたくない真実というのは沢山あります。誰しもあります。

怖かったり、気持ち悪かったり、不愉快になることも多いかも知れません。

 

 

しかし、「知ること」はもっとも単純にして明快な、「世界を良くする方法」ではないでしょうか。

 

 

三本の映画を見た後、きっとあなたもそう言えるでしょう。

 

では。